□little cheese
−黒と金の開かない鍵。



郁人の気配が遠ざかりそうになったのが寂しくて、私は手を伸ばしていた。

彼の頭は簡単に捕まり、柔らかい髪の感触がある。

【郁人】
「お、おい……っ!」

【奏】
「郁人ってさ……私と同じ……シャンプーの匂いするよね……」

お気に入りの、カモミールの匂い。
ぎゅっと胸に埋めるように、抱きしめた。

【郁人】
「あ、当たり前だろ……つーか……あんたが同じ……匂いなんだ……ろ?」

郁人の吐息を感じる。
ああ、そっか……私が同じ匂いなんだ……。

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