□little cheese
−トリック オア アリス

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水無瀬亜理紗は、明るくてすこしおっとりした女の子。

優しい両親と、兄の静久と共に暮らし、大好きな友達に囲まれながら毎日を平和にのんびりと過ごしている。

誕生日の前日の夜遅く、静久が亜理紗の部屋を訪ねて来て言った。



『二人きりで、誕生日を迎えないか?』



小さなケーキを取り囲み、もうすぐで0時を指そうとしている壁の時計を見ながら数を数える。



『あと10秒……あと5秒……。3……2……1……』



時計の針が天辺を指したその時、『静久』が淋しそうに微笑んだ。



『――さあ、時間だよ。アリス』



途端に足元がすっと抜けた。

黒い穴の中に、奥に、底に、引っ張られていく、落ちていく。

迷い込んだ『不思議の国』は、甘い飲み物で体が縮み、大きなカップケーキをかじると元に戻り、水がない場所で溺れ、花がダミ声で喋り、誰かの首を切ることが趣味の女王様が治めるへんてこな世界。

そこで亜理紗を待っていたのは、『知り合いにそっくり』な人々。

そこで亜理紗は『亜理紗にそっくり』だという『アリス』という少女に間違えられてしまう。

毎日行われるお茶会に毎日出される同じ種類の紅茶、スコーンにクリームに、こけもものジャム。そしてお茶会の後に必ず起こる、女王様のパイを盗んだ犯人の処刑。

不思議の国は、アリスがいなくなったために世界の動きが止まり、『同じ日』を毎日繰り返しているという。

「アリスが帰ってきたから、世界は動き出す」という人々の言葉に、焦る亜理紗。このままアリスにされてしまったら元の世界に戻ることも出来なくなるかもしれないため、本物のアリスを探すことに。

だけど住人達は亜理紗をアリスと思い込んで、あれやこれやとやりたい放題。

誰もがアリスを愛し、必要としているという世界から、亜理紗は逃れることが出来るのか?

それとも、アリスに――?


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